アーティスト向けの整体とは?
更新日:9月2日
アーティスト向けの整体とは?
当施設では、長期にわたるリハビリのみならず、限られられた枠ではありますが、お身体にに悩みのある方や、アーティストの方々へのコンディショニングも行っております。

歌手から、ピアニスト、他の楽器演奏者まで通われています。アーティスト業として、カラダを日々酷使する中で、常に高いパフォーマンスを出し続けるためには、カラダの悩みを解決することや、メンテナンスが常に必要となってきます。
リハビリと整体は、少し言葉が離れているものの、目的や、向かうべき目標は一緒だと捉えております。
リハビリでは、病気や障害を負ってから、カラダを改善し、日常生活や動作を向上させていく過程を指します。
アーティストの整体では、カラダを常に修正しながら、ステージで最高のパフォーマンスを高いレベルまで引き上げていく。
カラダの質を高め、最高の自分を手にし、輝いてもらうことに、どんな方も違いはありません。
今回は、当施設に通って頂いているアーティストの方々の中でも、歌手の池田聡様と、アーティストとして、様々なビッグアーティストを手掛けられている真藤敬俊様、他のシンガーを含め、整体の流れをご紹介させて頂きます。
歌をうたうこと

発声と言っても、カラダのどこをよく使っているかは、人それぞれです。
特に、歌手の方は、声帯を酷使して、年齢とともに、声が出なくなってしまう症状に悩まれる方も多いです。
これには、どんな姿勢で、どの筋肉を強く使って発声するかという点で、アーティストの方に違いあり、歌手生命としての寿命も異なってくるからです。
声帯に負担をかけずに、身体の違う箇所から発声をつくることや、声の調整 を行うことが出来ます。
声はどこから出ている?という問いに対して、喉の「声帯」が頭に浮かぶ方が多いと思います。
実際に、声が出る過程は、この声帯だけではありません。
解剖学的に述べると、声帯は1秒に何百回と振動が起こることから生まれます。
この振動が、その先の鼻の奥の空間(咽頭腔、口腔、鼻腔)の共鳴腔と呼ばれる空間で、声の質や音色が形成されています。この共鳴腔の構造により、人の声や、歌声、声質は、異なっています。1)

声帯の振動から、声質をコントロールする共鳴腔での役割を話しましたが、その前にも、歌う上での、大切なメカニズムがあります。声帯振動させる呼気(肺から息を吐き出す)は、腹圧から生み出されています。
肺自体には、押し出す筋肉のような存在はなく、肋骨周囲の筋肉と、それを支えている、お腹周囲の筋肉によって空気が送り出されています。
整理すると
腹圧が高まり、肺から空気が流れる(呼気)
→喉頭(喉の部分)にて声帯が振動
→共鳴腔で振動が響き発声
発声は、声帯から生み出されるだけでなく、お腹周りや、様々な筋肉、解剖学上の構造によって生み出されています。
冒頭で述べた、発声の違いや寿命と呼ばれる変化は、声帯の状態だけでなく、カラダの状態によって、変化を富むということを先に述べておきます。
※発声障害は、ポリープや嚢胞形成などの炎症声病変と、筋緊張の度合いや声門の状態、変声障害が当てはまる機能性発声障害が、疾患分類と挙げられます。細かい疾患の内容や、炎症性病変による発声障害の内容は、ここでは割愛させて頂きます。
リハビリと歌うこと
ここでは、少し話がそれますが、リハビリテーション分野では、「嚥下」という飲み込みの動作まで、話が広がっていきます。

歌を歌うことに使う声帯は、喉頭と呼ばれる喉の部分にありますが、ここには、肺と繋がる気管支と、食道が隣り合わせに存在しています。
水を飲む。食べ物を飲み込む。
この動作も、発声と非常に関わりがあります。
共通点としては、どちらも喉周りの筋肉が使われていて、声が出にくくなると、飲み込みの力も減っていくという、有意さが証明されています。
全身の筋力が少なくなると、発声もしにくくなり、食べ物を飲み込む能力も失ってしまいます。
だからこそ、話す、歌うことも、リハビリテーションの分野では、深く関わりを持つ大事な動作であり、共通して言えることがたくさんあります。
嚥下機能改善では、全身の筋力強化から、姿勢の取り方、発声練習を主に行いながら、誤嚥せずに飲む力、食べて飲み込む力を養っていきます。
食べ物を楽しく味わって食べる。そして、人と笑い合いながら、楽しく会話をすることは、心身の健康のためにも、非常に意味深く感じてきます。
話が逸れましたが、アーティストの歌を歌う発声では、姿勢や筋肉の状態など、基礎を整えた後に、より具体的に必要な筋肉をつくっていきます。どこを使っているかという、謎を紐解くには、まず「呼吸」に着目することが必須です。
呼吸に必要な筋肉
呼吸には、何種類もの筋肉が携わっています。
呼吸には、大きく分けて、「呼吸筋」、「呼吸補助筋」という2種類で大別されます。
(他にも、姿勢や、アーティストの方々によって、使う筋肉は異なってくるため、異ってくるため、インナーマッスルや他の筋肉に関しては、割愛させて頂きます。)
初めに「呼吸筋」とは、酸素を吸い込む肺、肋骨周囲の筋肉を指します。
肺そのものの、臓器は、筋肉を持たないため、肺を膨らますために、肋骨周囲の筋肉、肋間筋と呼ばれる筋肉の働きが必要となってきます。

肺年齢と呼ばれる、換気機能を数値化した指標がありますが、臓器自体の状態と、この肋骨周囲の筋肉の状態により、呼吸は異なってきます。
ヘビースモーカーと呼ばれる、喫煙頻度が高い方に関しては、肺が硬くなることで、肋骨周囲も硬くなりやすくなっていることが特徴です。
皆さんがよく食べられているスペアリブが、この肋間筋を指します。
このスペアリブには、息を吸う時に使用する外肋間筋と、息を吐く時に使用する内肋間筋を指します。
そして、肋骨の下を覆っている横隔膜の働き、先ほど述べた発声の前の腹圧の鍵となってきます。
これらの筋肉は、硬すぎても良くなく、ゴムのように柔軟性を持った状態で、上手く働くことが大切です。
この肋間筋が硬くなるときは、姿勢が悪い時や、息苦しさとして出てくるケースもあります。
スペアリブを想像してもらうと、骨は非常に薄く、肺の収縮に合わせて肋軟骨と呼ばれ、軟骨部分で調整され、動きやすくもなっています。
女性にとっては、崩れやすいボディライン!?
逆を言うと、動きやすい反面、変形しやすいことも特徴です。

よく女性の方で、最近立ち姿勢で、肋骨の出っ張りが気になるという方が多いです。
これは、上の肩や、下の股関節から始まり、姿勢の異常から、最終的に肋骨が前方に出て、スタイルが乱れてしまう結果となります。
特に女性の見え方で話を上げると、肋骨が広がり、肋間筋が硬い状態となると、樽状に広がり、ウエストが太くみえ、くびれがなくなってしまいます。動きやすい肋骨だからこそ、姿勢変化によって、女性らしいボディラインが損なわれてしまいます。

話を広げると、この肋骨の姿勢から、次に首、顔への繋がることで、フェイスラインの見え方まで影響してきます。
少し話が逸れてしまいましたが、女性のボディラインの見え方に関しては、また後日まで話させて頂きます。
姿勢を整えて、呼吸に大切な肋骨の筋肉、そして肋骨の位置を正しく使えるようにすると、非常に呼吸がしやすくなります。
ここまで読み進めて頂くとわかる通り、この肋間筋の筋肉の質や、姿勢によって、歌の声質が既に変わる要素があるということです。
呼吸補助筋とは?
次に呼吸補助筋に移ります。
呼吸器疾患をお持ちの方は、痩せ型の方が多いことが特徴的ですが、同時に呼吸補助筋が優位となっています。

これは、先ほど話した基本的に使用する呼吸筋のみでは、酸素不足となり、呼吸補助筋が必要となり、絶えず鍛えられしまった結果です。
具体的にどの部分かという、首まわりの筋肉、腹筋など、通常の呼吸筋では、賄われずに、補助筋が、フルで活動し、筋肉が発達している状態を指します。
呼吸器をお持ちの方や、最近呼吸がしずらいと感じている方は、この呼吸補助筋までもが硬くなってしまい、本来働くべき呼吸筋が上手く使えずに、姿勢も乱れてしまっていることが非常に多いです。
※肺の変性や、気管支喘息、心疾患などの、循環器疾患をお持ちの方は、専門機関による検査と治療が必要です。
大切なことは、立ち姿勢を整えることと、基本的な呼吸筋の柔軟性を常に獲得しておくこと。そして、呼吸補助筋が働き過ぎて、硬くなっていないかも、確認が必要です。
アーティストによっては、努力的な発声を重ねて、姿勢が崩れ、声の出しにくさや、腰痛まで引き起こされる方もいらっしゃいます。
発声に大切な姿勢
最初に、腹圧→声帯振動→共鳴腔という、発声のプロセスを話しました。この発声の起源となる腹圧には、下半身も含めた姿勢が非常に大切となってきます。
その前に腹圧が高めるという、メカニズムを簡単に説明します。
よく聞くインナーマッスルとは、先ほど述べた横隔膜の他に、骨盤底筋、腹横筋、腹斜筋が含まれます。
それぞれの筋肉の働きや、立ち姿勢の中での繋がりを述べるとキリがなくなってしまいますが、立ち姿勢や動作によっても、このインナーマッスルに働きは異なってきます。
アーティストによっては、左足を軸に立って、大きく歌う時は、右足に体重を移すなど、独自のスタイルを確立している方が多いです。
立った姿勢というのは、お尻周りの筋肉、大殿筋や中殿筋という筋肉によって、その下の大腿部から、上の体幹の繋がりが作られ、支えられています。
この重心の位置によって、先ほど挙げられた、腹斜筋や、横隔膜などの働きも左右差が生まれます。
アーティストのスタイルによって、使う筋肉は、異なり、声の出し方も異なります。左右の肺の換気量も、当然異なっていきます。
アーティストの中で、話を広げると、その方がギターを片手に歌っているのか。ピアノも弾きながらも歌っているかによっても、大きく姿勢やパフォーマンスは異なってきます。
楽器演奏者の悩み
当施設では、様々な楽器、フルート、ギター、ドラム、ピアノのプロ演奏者が来られています。今回は、主にピアノを弾かれているアーティストを例に、カラダを紐解いていきます。
上記に挙げたどの楽器も、共通して言えることは、カラダの使い方が左右対称でないということ。
カラダの施術では、本来ある正しい左右対称の姿勢を目指すことが多いですが、アーティストの支援では、これが必ずしも正解とは限りません。
全てを整えるわけではなく、アーティストのスタイルに沿って進めていく。
カラダの悩みや痛みがあれば、施術で解決することは、もちろん、その方のスタイルに合わせて、一番高いパフォーマンスに持っていくことを目的としています。
具体的には、ピアノ演奏では、左手は伴奏、右手ではより細かい指の動作が求められることが多いです。
(ブルースやジャズ、音楽ジャンルによる弾き方の違いはここでは、割愛させて頂きます。)
左手の方は、左右の鍵盤の移動による動きは少ないですが、肩周りが固定的となりやすい傾向にあります。
右手は、逆に鍵盤の移動が大きいという特徴から、指への負担も、弾き方によって個人差が生じやすい部分でもあります。

若いうちは、アーティストとして自分のスタイルを築き上げる過程で、カラダを酷使することができますが、年齢とともに、自分の弾き方による障害が出てくるケースもあります。
鍵盤に対して肩肘の位置を決めて、個々の指の弾き方が決まりますが、指によっては無理な態勢により、腱鞘炎や、バネ指様の動かしづらさが出てくるケースもあります。
施術により痛みや動きが解消することは、簡単ですが、アーティストのスタイルよって、どう弾き方と付き合っていくかは、深い話し合いと調整が必要となってきます。
ここもリハビリと共通することが多く、手術や病気による後遺症を改善することは、もちろんですが、機能上げ続けていくために、どう生活を変えていくか、という点が大切となってきます。
リハビリという言葉の広がり
整体という言葉を使っていましたが、リハビリという呼びかけをすると、「私はまだそんな歳じゃない」と、言われることがあります。
リハビリという言葉は、世間の中で、高齢者に向けたサービスや、重症度が高い方への大がかりな訓練過程という、イメージを持たれている方もいらっしゃると思います。
リハビリの定義としては、以前行っていた習慣や動作を、もう一度取り戻す時に、使用されます。普段行っていたという、基準は人それぞれであり、高低を定めることは、難しいです。
例を出すと、脳血管疾患を患い、後遺症として片麻痺を呈した方は、負った麻痺に対してのリハビリを始めは集中的に行います。
中には、麻痺の状態が目まぐるしく改善し、病気を機に、病前より高いパフォーマンスを目指される方もいらっしゃいます。
特に、リハビリ過程では、病前から抱えていた、腰痛や膝の痛み、不具合が起きやすいカラダの特徴を、修正しないと、前に進めないケースが多いです。
「病前よりもカラダや生活を良くする」ということをテーマとして掲げることもあり、より高い基準に向けた関わりも、リハビリと呼ぶこともあります。
今回は、アーティスト支援の中でも、歌手とピアニストの例を出させて頂き、解剖学的なメカニズムから、パフォーマンスを左右するカラダとの関わり方、支援方法を述べさせて頂きました。
最後に、当施設に通われている池田聡様の告知をさせて頂きます。
昭和から長く活躍されており、今年で40周年を迎えます。

日々、カラダをみさせて頂く中でも、カラダとの付き合い方、彼の歌に対して思いを聞く機会があります。
40年のキャリアは、想像を絶するところでありますが、今尚活躍されている姿は、カラダとの向き合い方から、歌手として貫く姿勢から触れることが出来ます。
今回のニューアルバムは、そんな池田聡様の渾身の曲が詰まっています。

以下、池田聡様との対話
〜歌は世につれ、世は歌につれ〜
「時代の雰囲気によって、歌の曲調は異なる。苦しい時代にこそ、人を元気づける、素晴らしい曲が生み出される。逆に、順調な時代では、少し調子に乗った音楽が流行る。
歌は、世の情勢や雰囲気から生み出され、また世の中も、その歌たちによって、かたち創られる。
50〜60代、歳を重ねる中で、新しい音楽が次々と生まれ、流行りの音楽が形成される。
「池田聡」の型で、足踏みすることなく、型を壊して新しいチャレンジをしていく。
壊すことは、すごく体力がいる大変なことであるが、流行りの音楽に負けない、昔から培ってきた自身の音楽により、深みが出てくる。
「新曲」より「深曲」を目指す。
同じ繰り返しではなく、壊したり、更に深めることで、攻めた曲作り、音楽活動をしていると、世の中から感心を持ってもらえる。」
終わりに
今回は、当施設に通われているアーティストのご活躍を例に挙げさせて頂きました。アーティストの活躍と、リハビリという言葉は、一見して離れているように感じますが、カラダの機能に着目すると、目指しているところや、実際に行っていることは、非常に重なることが多いです。
今回のアルバムを聴いて、カラダの悩みや、皆さんの向かうべき目標が同じことを感じてもらえたら、幸いです。
きっと、皆さんの背中を押してくれる。
そんな楽曲が詰まっています。
歌を歌う。楽器を弾く。
趣味で日頃行っている方から、これからリハビリで再起を目指そうとしている方。
また今、カラダの悩みがありながらも、励まれている方まで。
皆様がカラダに興味を持ち、知って頂いた上でも、また明日、少しでも改善して、充実した日々が過ごせることを、心から願っています。
【参考文献】
1)布施 陽子,福井勉,水戸和幸. 健常女性における胸囲および腹囲周囲径と 腹横筋筋厚の関係性. 理学療法科学 37(5):455–462, 2022.
2)平野滋,杉浦庸一郎,金子真美,椋代茂之.健康長寿のための音声の維持.日耳鼻 124; 11-13.2021.
3)Dunn NM, Katial RK, Hoyte CK.(2015).Vorcal cord dysfunction: a review. Athma research and practice(2019)1:9.
4)Thorpe CW, Cala SJ, Chapman J, DavisPJ.(2011) Patterns of Breath Support in Projection of the Singing Voice. Journal of Voice Vol. 15, No. 1, pp. 86–104.



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