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脳卒中リハビリ 脳出血編①

更新日:5月1日


今回は、脳血管疾患の中でも、重症度割合が高い、脳出血に関して、起こるメカニズムや特徴を、述べていきます。



脳出血とは?


脳出血とは、脳内の血管が破れ、脳内に出血を起こす疾患です。


種類として、被殻出血視床出血脳葉出血(皮質下出血)小脳出血脳幹出血など、脳出血が起こる部位により種別されています。



図1:脳の出血部位(MRI画像縦断面)
図1:脳の出血部位(MRI画像縦断面)


 被殻出血は、40~50%と最も多く、次いで視床出血20-30%という割合となっています。この二つの好発部位は、大脳基底核と呼ばれ、そこには、非常に細い血管が通っています。


血管の太さ

 脳血管疾患が、病気の中でも起こる割合として、非常に多いのも、血管の細さに原因があります。身体にある一番太い血管は、心臓から上に向かう、大動脈が3cmになります。次いでお腹にある、腹部大動脈が2.5cmです。心臓から近い内臓周囲の血管は、非常に太い血管が通っています。採血が行われる、腕の血管は、4mm程度で、そこから1mm程度の細動脈に枝分かれしていきます。この枝分かれした細動脈の太さは、脳血管の中では、比較的太めの血管と、同等の太さになります。この同等の、太い脳血管の一つに、中大脳動脈が挙げられます。



図2:身体の血管の太さ
図2:身体の血管の太さ

 中大脳動脈は、前頭葉と側頭葉、頭頂葉の外側に、血液を送り出している血管です。直径は1mmと、脳内では大きな血管になります。被殻出血は、この中大脳動脈から枝分かれし、レンズ核線条体動脈と呼ばれる、細い血管で起こります。太さは、0.1~0.3mと非常に細い血管であり、高血圧脳出血が大変起こりやすい部位となっています。



図3:MRA(磁気共鳴血管撮影)
図3:MRA(磁気共鳴血管撮影)


皮質下出血は、10~20%を占め、大脳の表面を覆う皮質より下、非常に細い血管で起こる出血になります。原因として、年齢層により、起こる傾向は、異なってきます。高血圧から起因されることは少なく、若年層では、脳動脈奇形やモヤモヤ病などの血管異常によるものが多い傾向にあります。高齢者においては、アミロイド・アンギオパチー (Cerebral Amyloid Angiopathy, CAA) が多くみられることが特徴です。CAAとは、タンパク質が変性し、脳血管内の沈着することで、出血が起こります。このタンパク質が変性したアミロイドβ沈着は、認知症の原因ともされており、近年では、原因や対処法が明らかとなっています。


次いで脳幹出血小脳出血は、10%程度の割合でみられます。脳内で担う働きは、それぞれ異なるため、上記の脳出血の種類により、後遺症や、リハビリのアプローチ方法も異なってきます。



図4:脳出血の種別割合
図4:脳出血の種別割合

このように、脳出血が起こる原因は、複数原因があり、年齢層により、傾向も変わってきます。脳出血の原因や、起こる機序は、医療発展の歴史や、疫学をみてみると、特徴が捉えやすくなります。




脳出血の疫学


 医療の進歩により、現在の脳出血割合は、脳梗塞を下回っています。かつて、1960年代は、脳血管疾患の3/4を占めておりましたが、1970年代から、医療の進歩により、低下傾向にあります。(厚生労働省,2023)これは、降圧剤の普及や、食生活の改善が主な要因として考えられています。脳梗塞の発症直後では、t-PA(静脈血栓溶解注射)など、早期処置が導入されたことで、重症者割合の低下が明らかにみられています。脳出血においても、開頭血腫除去術や、静脈瘤のコイル塞栓術など、発症後の急性期の段階で命を救う、または重症度を低くする、医療技術の進歩が、著しくみられます。


 1960年から、医療や様々な進歩により、発症割合は多いに減ってきましたが、注意すべき傾向もあります。それは、高齢化に伴い、70歳以上で脳出血の数が増えているということです。高齢者の数が増えているため、脳血管疾患の患者数も増えるのは、当たり前のことですが、老後も歩けて、健康で質の高い生活を送るためにも、脳出血の予防は非常に大切です。



図5:脳血管疾患死者数推移 (万人)
図5:脳血管疾患死者数推移 (万人)







脳出血の原因


原因としては、交通事故のような外傷性と、そうでない非外傷性に分けられます。非外傷性で起こる原因として、代表的な高血圧性脳出血と、それ以外、脳動脈瘤や、先天的な脳動脈奇形などの血管異常脳腫瘍による出血などが挙げられます。特に高齢者の脳出血の原因としては、アミロイド・アンギオパチー(Cerebral Amyloid Angiopathy, CAA)が挙げられます。



図5:脳出血の原因
図5:脳出血の原因

脳出血の危険因子


脳卒中治療においては、日本脳卒中学会が提示している、「脳卒中ガイドライン」があります。下記の、高血圧、糖尿病、脂質異常症は、脳卒中を防ぐためにガイドラインの中でも、必ず出てくる、危険因子となります。



●高血圧


 脳卒中や、心血管の病気においても、高血圧は、最大の危険因子として言われています。先ほども述べた、被殻出血や視床出血の好発部位は、非常に細い血管が通っており、高血圧出血に至るリスクが高くあります。高血圧は、降圧剤の服用もそうですが、食事や運動など、生活習慣の改善が必要です。減塩や野菜の積極的な摂取、コレステロールなど、飽和脂肪酸を控え、減量することも大切です。


 正常血圧は、120/80mmHgと言われているのが通例で、130/90mmHg以上では、心血管や脳卒中のリスクは上がってきます。この高血圧は、他の臓器にも悪影響があります。特に

腎臓においては、高血圧が、慢性腎臓病の原因となります。また、慢性腎臓病になると、高血圧を重症下するといった、悪循環が起こります。


 高血圧を改善するといっても、腎臓や心臓などの臓器と深く関連しているため、総合的に、食事や運動などの、生活習慣を改善することが大切です。







●喫煙、飲酒


 高血圧を招いている原因として、喫煙と飲酒も挙げられます。飲酒は、頻度により影響は異なりますが、飲酒をしない郡と比較すると、明らかに高血圧が認められています。飲酒により交感神経が亢進し、血圧が上昇する。内分泌系の活性化により、血圧上昇する。筋細胞内のカルシウム、マグネシウム濃度の低下により、電解質異常を引き起こすことで、血圧が上昇します。メカニズムとしては、複数の事象が起こりますが、結果的に長期的な飲酒習慣は、高血圧を招くことが証明されています。お酒を息抜きとしている方、晩食でお酒を嗜むことが、日課の方もいらっしゃると思います。飲む量を減らす、「休肝日」として、飲まない日を作ることでも、高血圧は改善されます。


 一方、喫煙は、直後に血圧が低下する、という結果が報告されています。それでは、高血圧を防ぐために、喫煙をするということは、間違いです。喫煙は動脈硬化を進め、それが脳梗塞や、脳出血のリスクを高めてしまいます。また喫煙は、肥満との相関もあり、この流れもまた、脳卒中のリスク因子となっています。



●脂質異常症 


 この脂質異常症は、生活習慣の乱れや遺伝、基礎疾患など、原因が挙げられます。高コレステロール血症は、特に動脈硬化を進め、脳卒中を引き起こす危険因子として挙げられます。

 比較的、遭遇しやすい症状ではありますが、服薬により、高コレステロール血症は、管理が容易になってきています。遺伝性としては、家族性高コレステロール血症が挙げられ、心臓の冠動脈疾患や、皮膚、腱の黄色腫が形成される特徴があります。その他の、何らかの原因で起こることは、2次性の脂質異常症と言われ、以下の疾患により、脂質異常症が引き起こされるケースも中にはあるので、注意が必要です。


・糖尿病

・甲状腺機能低下症

・ネフローゼ症候群





 対策としては、高血圧と同様に、食事や生活習慣を改善することで、高コレステロールを抑えるが最重要です。遺伝性や2次性の脂質異常症に対しては、医師の診断の下、原疾患に対しての治療を行うことで、間接的に脳卒中のリスクを低下させることが可能です。



●糖尿病


 2型糖尿病も、脳卒中のリスクを高めます。食事や運動を含めた生活習慣を改善することで、脳卒中や心血管の病気のリスクを、有意に低下させます。脳卒中ガイドラインでは、2型糖尿病患者に対して、禁煙と食事管理、運動を行うことで、心疾患や脳卒中の、発症や死亡率を低めることが、エビデンスレベルで明らかなっています。食生活では、食物繊維の豊富な炭水化物を摂取すること、赤み肉を避けること、地中海風の食事を摂ることで、2型糖尿病の改善と、心疾患を予防すると言われています。





 糖尿病は、脂質異常症と相関しており、2次性脂質異常症を来します。慢性的な糖尿病により、インスリン低下が起こり、内臓脂肪から脂肪酸が放出され、脂質異常症を促進するケースがあります。生活習慣病は、密接な関わりが見られるため、多角的に食事や、生活習慣の見直しを行う必要があります。



●心疾患


 脳梗塞編でも述べたように、70歳以降では、心原性脳塞栓症の割合が非常に高くなります。心疾患と、脳卒中は、切っても切れない関係と言えます。基礎疾患として、心疾患のある方は、定期受診や服薬のコントロール。またはペースメーカーの留置など、医師に相談の上、適切に付き合っていくことで、リスク軽減出来ます。食事や、生活習慣を改善する。血圧、服薬を含めての管理を着実に行うことで、基礎疾患と上手く付き合い、脳卒中のリスクを軽減することが可能です。




定期検診を忘れずに


上記に挙げられた、高血圧や、糖尿病脂質異常症など、脳卒中に関連深い、症状に対しては、定期的な検診が欠かせません。糖尿病や、心疾患など、基礎疾患をお持ちの方は、すでにかかりつけの下で、服薬や運動指導を受けている方が多いと思います。基礎疾患をお持ちでない方も、定期的な検診により、血液検査から内臓の数値や、状態を診ていくことは、非常に大切です。





疾患がつく前の予備群として、数値追いをすることで、生活習慣病を改める機会となります。遺伝性として、家系的に陥りやすい疾患を知ることも、予防という観点で大切にしていきたいです。特に血管が、生まれつき細い家系は、脳卒中を起こしやすい傾向が見られることもあります。細い血管に対して、動脈硬化が進むと、尚更、リスクが高まります。


また、高血圧や糖尿病、脂質異常症の中でも、遺伝性はそれぞれ一定の割合で存在しています。家族や家系の特徴を知り、個人の生活習慣や血液検査などの数値を照らし合わせていくことで、未然に病気を防ぐことができます。




中には、脳血管疾患を未然に防ぐ検査として、MRIMRAなどが挙げられます。MRAは、磁気共鳴血管造影と呼ばれ、脳血管の細部まで、診ることが可能です。脳卒中は、中年や高齢者に限ったことではなく、若年層にも見られることがあります。それは、先天的な奇形や、静脈瘤が形成され、ある時、突然に破裂してしまう、非常に危険な状態です。事前に脳内の、動静脈瘤や奇形などの、血管異常がないかを、確認しておくこともおすすめします。




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