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脳卒中リハビリ 動作獲得編

更新日:8月19日



脳卒中には、脳梗塞と脳出血の二つの発生機序があります。

それぞれ、脳梗塞編脳出血編①にて、特徴や、リハビリのポイントに関して述べさせて頂きました。今回は、脳卒中全般で、多く見られる片麻痺の後遺症を例に、リハビリの改善過程をお話しさせて頂きます。



リハビリの大原則


 受傷直後、カラダの状態が安定してきてから、あらゆるリハビリ過程においても、共通する大原則があります。

それは、脳出血編②でも書かせて頂いた、以下の3つのポイントです。


・豊富な運動量

・麻痺側に感覚を入れる

・正しい動作パターンの学習


 脳卒中の後遺症は、個人が大きく、リハビリ方法も様々です。この3つは、どのリハビリ経過においても、共通して言える大切なポイントで、改善するために必要不可欠です。



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豊富な運動量


 脳出血や、脳梗塞が起きた直後の、急性期では、覚醒が著しく下がるケースが多いです。これは、脳出血や梗塞巣により、脳が腫れた状態が起こることで、意識混濁や反応が薄い状態がみられる現象です。脳出血や、脳梗塞後の救急処置は、各ケースによります。手術や保存治療後、血圧やバイタルサインと言われる、基本的な全身状態が安定すると、できるだけ早く、この覚醒を上げていくリハビリが必要です。早期発見早期治療ということは、どんな救急を要する事故においても、耳をすることが多いと思います。リハビリでは、それに加えて早期リハビリが付け加えられます。


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 この直後の急性期から、回復期、生活期においても共通して、豊富な運動量をこなしていくことが大切です。この豊富な運動量といっても、むやみに多く行うのではなく、時期によった、適切な運動プログラムを行うことが必要です。急性期では、ベッドから起き上がり、座った姿勢を30分保持することも、大変なリハビリ課題となってきます。寝た状態と、起きた状態では、血液を送り出している心臓の負荷が大きく異なり、血圧の変動を大きく引き起こします。特に気をつけたい、起立性低血圧と呼ばれる、起きると血圧が一気に下がり、意識レベルが下がってしまう現象には注意が必要です。急性期では、起きて血圧をさせて過ごすことも、まず目一杯行える豊富な運動量と言えます。ベッドや、車椅子において、座ることに慣れてきたら、次は立ち上がりや、立った姿勢を保持することが、課題となってきます。急性期から、回復期、あらゆる時期においても、その時に行えるリハビリを、適切にこなしていくことが、後遺症を改善させていくために必要不可欠です


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基本動作の獲得


 基本動作とは、起き方が始まり、次に座る、立つ。最後に、歩きの動作練習へ、徐々に難易度を上げていきます。リハビリプログラムは、難易度が様々ですが、身体の使い方には、共通点が多くあります。初期段階から、麻痺の部位に対し、できるだけ負荷感覚を、入れていくことが大切です。上手く動かなかった麻痺側を、回復期で動かせるようになり、歩きが再獲得されるのも、負荷による筋力強化と、感覚向上によりコントロールが行えるようになった成果と言えます。この時に使われる負荷とは、豊富な運動量を指します。感覚向上とは、麻痺側に感覚を入れることを意味します。


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〈起居動作〉


起き上がり一つでも、様々な動作が組み合わさり、一連の動作が出来ています。後遺症のある方は、麻痺のない方ばかりで寝起きをしていませんか?これも、非常に気をつけたい部分になります。この起居動作は、起床時に必ず、一回は行う動作で、トイレに行き、昼寝をすることも考慮すると、最低でも往復で2,3回行うと思います。1日3回するとして、1週間に21回も行うことになります。この21回の動作が、毎回健側を使っているとどうでしょうか。麻痺側をあえて使うとすると、1週間に21回、起きると寝る、を区別すると、1週間に42回も動作練習が行えることになります。


起き方、寝方も、麻痺側を使うためには、動作方法があります。手のリーチ動作から、体幹を捻り、横向きに状態から、また体幹を使って起き上がる。細かくみると、非常に練習が必要な動作の一つとなります。



〈起立着座〉


 次に立ち座りですが、その前に座り方にも、注意したいところです。麻痺側の足が地についていない。肩が麻痺の手の重みで下がっている。真っ直ぐに座っている状態をとれてから、立ち上がりは始まります。下肢の痙性と言われる筋緊張の高い方は、装具を使用した状態でも十分です。装具の矯正力を借りながらも、麻痺側の足を地にしっかりとつけてから、膝と股関節、さらには体幹から肩の動作も作っていくことが大切です。

 ここでは、感覚を入れること。そして正しい動作を、獲得していくことが重要性が出てきました。これは、リハビリの3つのポイントにでも出てくる、麻痺側に感覚を入れること。正しい動作パターンを獲得していくことに繋がります。



〈歩行〉


 立ち座りの後、立った姿勢が取れるようになってから、歩きの練習に入ります。歩きは、動的な一連の動きが入るので、基本動作の中でも、一番難易度が高いリハビリ課題になります。難易度が高く、高負荷の動作となるため、豊富な運動量を取るために、必要不可欠な動作です。とは言っても、初めの段階では、片側の足に全く力が入らないことが多いため、装具を使用して、立位や歩行練習を行うことが多いです。下図のように、股関節から膝、足首に、それぞれ継ぎ手を固定することで、片麻痺を安定させることが可能です。この長下肢装具により、麻痺側の筋肉を使わせること。そして、足の裏に体重の感覚を入れ、脚全体を使うといった、大まかな歩行リズムと動作学習を図っていきます。片麻痺とは、筋力を使い、動かすこと(運動神経)や、体重をかける感覚(感覚神経)の二つを失うことが多いため、装具により麻痺側に負荷をかけることで、基礎的な立った姿勢での使い方を学ぶことが可能です。


図1:Pacific supplyから長下肢装具       ゲートイノベーションの抜粋
図1:Pacific supplyから長下肢装具       ゲートイノベーションの抜粋


 次に、ある程度麻痺側の足に体重をかけ、支えられるようになった段階で、装具を股関節から膝下まで短くして、動作練習を行っていきます。長い装具では、大まかな麻痺側の動きの学習を行いますが、装具を短く支える部分を少なくすることで、次は、細い関節の動きを再学習していきます。後遺症には個別性が強いため、後遺症により歩行パターンもいくつかあるため、再学習を行う過程では、個人によってリハビリのアプローチ方法は異なってきます。そこには、装具選定が必要で、麻痺の改善過程で、適切な機能を選択することも、大変重要なリハビリの一つになります。最終的に、麻痺の重症度や改善度合いによりますが、装具を外して歩行の再獲得をする方もいれば、装具を使用しながらも歩行を達成される方もいます。


図2:Pacific Supply から短下肢装具の抜粋
図2:Pacific Supply から短下肢装具の抜粋

 大切なことは、麻痺の改善に向けて正しい、歩き方や動作を覚えることで、改善していく流れを作っていくことが、リハビリ過程において大切となってきます。




脳出血後遺症の、改善過程


 次は、リハビリ過程の中でも、具体的な進め方を、述べさせて頂きます。後遺症は、脳出血が起こる部位や、大きさにより、個別性があります。


 左右のどちらの脳によっても、片麻痺の症状は異なってきます。右脳であれば、左片麻痺と、左側への認識が乏しくなり、pusher現象と呼ばれる、麻痺側に強く押し付けるような、過活動が見られケースが多いです。逆に左脳損傷では、右片麻痺に加え、言語障害や、失行などの構成障害がみられる特徴があります。左右の脳損傷部位の確認や、高次脳機能障害を含めた、総合的な評価から、課題を克服していく、リハビリが必要です。


片麻痺の大まかな、歩行達成の流れを述べましたが、脳卒中には、目標達成するために、複合的な課題が設けられていること多いです。その一つに高次脳機能障害があり、下記のような症状が、代表的な症状が挙げられます。


・言語障害

・構音障害

・注意障害

・半側空間無視

・失行


特に、左脳の障害では、失語症を合併するケースが多いため、コミュニケーションをとることに工夫が必要となってきます。リハビリ過程でも、対面でのコミュニケーションは必須であり、これは、リハビリの学習効果に大きく影響をしていきます。発語や理解、どちらが行いにくいか。リハビリの中でも、どの練習の仕方が伝わりやすいか。一つひとつの症状を紐解き、課題に対して取り組んでいくことで、リハビリ過程と、その後の結果は大きく異なってきます。



生活復帰を果たすリハビリの強み


 リハビリ過程の中でも、最終段階として、病前のような生活になるべく近づけていくために、動作獲得が必要となっていきます。リハビリの前半では、まずは麻痺を改善させていくトレーニングを中心に行いますが、後半では、確実な動作獲得に向けたリハビリへ移行していきます。


 先程は、片麻痺の歩行を一例として挙げましたが、手の機能向上も生活復帰のためには、多くのリハビリが必要です。麻痺の重症度から、最終的に日常生活でどれだけ手を使うことができるかは、予後予測にてある程度決まってきます。大切なことは、病前生活に向けて、その方の希望や、予後予測を含めた具体的な到達地点を照らし合わせ、最大限の後遺症改善と、動作獲得を図っていくことが、リハビリではとても大切です。可能性がある中で、麻痺側をそのままにしていたり、回復が見込めるとこを諦めてしまっていることが非常に多いです。


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 上肢機能は、初めに肩甲骨周りの肩の保持を重きに置きます。この肩が保持できない場合だと、歩きにおいても、姿勢や歩行リズムが上手く保てずに、足を引っ張ってしまいます。上肢の近い部分から、正しい姿勢や、動作を獲得していくことが、リハビリの過程でまず必要です。肩の保持が行えるようになってから、次は肘、手首と、コントロールを再学習していきます。手の麻痺というと、手が握られ、肘や肩が強く曲がった、痙性とばれる症状がみられます。これは、脳出血により侵襲された脳部位、神経経路から、たえず、関節を曲げる指示が出されていることで、起こる現象です。急性期に注意したいことは、特にこの痙性による筋緊張が高いことから、関節が固まってしまう拘縮を生むリスクがあります。そうなると、2度と伸ばすことができない関節を形成してしまうため、急性期では、手の装具を使用し、拘縮を防ぐことが非常に大切です。


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 手の機能は特に、神経経路や動きか、下肢に比べて複雑なため、リハビリの期間も多く要します。肩、肘、指と、麻痺の改善と動作練習を行うことで、日常生活でできる限り、参加を図っていくことが、リハビリ過程で非常に大切となってきます。

 


脳卒中後の生活を、左右すること


 脳卒中が起きた初めの段階から、早期発見と早期治療。そしてなるべく早く、リハビリを開始し、出来るだけ多くリハビリを行っていくことが大切だと述べてきました。それに加えて、これらをも変える可能性のある、大切なことが、リハビリの過程にはあります。


それは、「誰と」、「何を目指すか」といことになります。


急性期を終え、回復期を経て、リハビリを諦めてしまう方も中には、非常に多いです。「もうこれ以上良くならない」と言われたことが、今後の生活を左右してしまいます。


歩けない、手が動かせない。でも諦めずに、できるようになりたい。

それが「何を目指すか」に当てはまります。もう良くならないと思ってしまうと、何を目指すかということは見えづらいです。


「何を目指す」と同時に、どこまでいけるかを指し示す「誰と」ということも、予後には大切です。もう良くならないと言う人と、ここまではまだ良くなると言う人。


あなたは、残りの人生でどちらを選びますか。



リハビリスタジオ 飛ぶカラダ 

理学療法士 尾作 研太

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